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□卒業と始まり
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それは卒業式を終えた二週間目の事だった




その夜、俺はいつものように焼酎を苺牛乳で割り大して面白くもないテレビをつけっぱなしにしてぼんやりアイツの事を考えていた






アイツと云うのは三年Z組の教え子だったななこ






出会いは二学期の終わりの頃

東北地方から親の都合で引っ越してきたのがななこだった




ななこは前の学校ではいじめにあっていたらしく転校初日なんかはとても表情が暗くいつも上の空の奴だった








そんなななこだったが神楽やお妙等が積極的に話し掛けてくれたお陰でクラスにも次第になんじむ様になっていた







俺も何かとななこに気かけ、話しかけたり、時には一緒に帰ったりした時もあった

そういや、日曜日でも一緒に遊びに行ったりする日もあったっけ







俺はいつもななこをZ組の一人として見ていたつもりだった

大事な教え子として








*****


ななこは卒業式にとびっきりの笑みを浮かべみんなと写真を録り合っていた



俺は遠くからアイツを眺めていた



アイツも明るくなったじゃねぇか……


笑えるじゃねぇか……
俺がいなくたって




俺は安堵したのと同時に俺の心は泣き出しそうになっていやがった……







なんだよ


綺麗な思い出のまま終わらせようとしていたのに


俺が未練を残してどうするんだよ




そんな俺の気持ちとは裏腹に、ななこは卒業式に一丁前にラブレターなんかよこしてきやがった








ななこはどんだけ俺の心をかきむしればすむんだよ







こうしてななこを忘れようと、教え子の一人としていい思い出にしてやろうと思っていたのにさ…








二週間前の卒業式の事をぼんやり考えながらテーブルの隅に置いてあるななこのラブレターを眺めていた







シトシトシ…

ボロアパートの屋根に雨が降る音が聞こえてくる



今日は朝から春の雨が降っていた






そうだ…。生徒と教師のままででいいんだ


これで良かったんだ

俺は自分に言い聞かせた









どれくらいぼんやりしていたのだろうか


ふと、時計を見ると、
時間は23時になっていた







さて寝ようかって立ち上げった時に呼び鈴が鳴った








…ッチ何だよこんな時間にと思いながら

いつものスエット姿で玄関に出ると











ずぶ濡れになったななこがいた








「こんな夜にどうした?」

驚きを隠しながら聞くと、ななこは俺の顔を見るなり泣き出しそうな顔で俺の胸元に飛び込んできやがった









『やっぱり……、先生が好きだよ…』

濡れた髪の香りがふわりと鼻腔に拡がった






それって、反則だろ……


いくら先生だからって云ったって無理だぜ?







俺は無言でななこを抱きしめていた





ななこは俺の腕の中にすっぽり埋まって泣いていた










「風邪ひくだろ?」

そう言い中にななこを上げた時には、俺は担任の先生から男になっていた






万年床と化したベットに引き込みななこを押し倒してしまった


俺…やめろ

理性を保て








獣と化している俺と担任である俺が格闘していた









「俺に幻想を抱かれても困るんですけど…。おれも一応男なんだ。のこのこと来やがって今からやる事が分かっているのか?」



おれはななこに罵声を浴びせた








頼むからいい思い出としていさせてくれ…


頼むからこの場から逃げ出してくれ……



頼むから……






俺はななこに警告をしたつもりだった








分かっている

学校の先生が生徒なんかに手を出しちゃいけねぇ事だって……










だがななこは俺の最後のあがきに素直に応じないほど信念は固かった







『わかってて来たんだもの…。こうでもしないと、先生振り向いてくれないから…』


そう言い自分から服を脱ぎ出した







強がるななこだったが手は震えうまくボタンが外せないようだった







「無理するな…。震えてるぞ。」

俺はななこの手首を掴んだ








「本当は怖いんだろ?大丈夫だ。俺はななこに手を出さねぇよ。犯すほど性欲は余ってないんでな。」


俺はどうにか理性を保てたようだ







「やるなら…。お互い気持ち良くやるのがいいと思わない?」

俺は微笑んだ






『せん…せい…』
ななこは震えて泣いていた







「ばーか、泣くなってななこの気持ちすんげえ嬉しいから」

俺はななこを抱きしめ濡れた髪を撫でた






「やっぱさ、順番は結構こだわる方なんだよねぇ…。俺って。
だからさ、ななこ、俺達付き合おうか…。」




そう云うと、ななこはかすれる声で

『うん。』と言った。








「今日から、教師と生徒は卒業な……。

これからは恋人同時だ」





どうやら俺はななこを卒業できなかったようだ



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